がん検診の効能と限界については良く知っている必要があります。特に有用なのは胃内視鏡検査(胃カメラ)と、便に血が混じっていないかどうかを見る(腸の病気を知る)便潜血検査です。
胃カメラと一般的に言われている胃内視鏡の利点はもし病変があった場合、その場で異常のある胃の粘膜の一部をつまんで顕微鏡検査(病理組織検査)ができることです。検査結果が出るのには1週間程度の時間がかかりますが、胃潰瘍などの原因となるピロリ菌やがんの有無を確認できます。バリウム検査はカメラを飲む必要がなく有用ではありますが、詳しく調べるためは再度胃カメラを施行しなくてはならず、二度手間です。
また、毎年となると放射線被爆量が若干問題になります。そうは言ってもカメラにも問題がないわけではありません。頻度は少ないのですが、管を中に入れるわけですから消化管を傷つけることがあります。また、他人が使ったものと同じカメラを飲むわけなので消毒するとはいっても、ウィルス肝炎などが感染する可能性がゼロではありません。ただし実際にカメラで感染したと言う報告はまだありません。
胸部レントゲンでは肺癌を見落とす可能性がありと申し上げましたが、これを解決すべく出てきたのが胸部CTによる肺がん検診です。これまでCTによる肺がん検診で1cm程度の肺がんの発見例が少なからずあり、早期発見、早期治療、再発予防という視点から新しい流れになっています。ただし毎年受けると被爆量の蓄積が多すぎるのではないかという先生もおられ、現時点では「帯に短し襷に長し」と言ったところでしょうか。
婦人科検診は通常の検診から外れていて区の検診として案内が届くようですが、実は婦人科検診は是非やるべきであると考えます。子宮頚部はヒトパピローマウィルスという感染症ががんを引き起こすことが知られており多産の女性に多いとされています。また、子宮体がんは女性ホルモンとの関係が指摘され、妊娠経験のない女性に発生しやすいがんです。どちらも症状がほとんどありませんが検診で見つかれば多くの場合、手遅れになることは少ないのでお勧めという訳です。
最近、がんが全身のどこかにないかとういう有料健康診断が流行で観光旅行を兼ねたツアーまで用意されているそうです。全身を調べて画像上異常がないかを探すことはそれなりに有意義ではあると思いますが、放射線被爆、費用、検査の限界などこれからまだまだ問題点を解決していく必要があり効果も未知数です。むしろ検査の結果を正しく理解して対応するための常識範囲の医学知識を持つこと、また適切なアドバイスをしてくれる良いかかりつけ医ないし相談できる医師を見つけることが大事でしょう。
2005年02月24日
がん検診について
posted by Dr.イチロー at 15:17| Comment(0)
| ■健診を利用しよう
2004年12月07日
健康診断の勧め
皆さんは健康診断をうけていらっしゃるでしょうか?検診の目的や限界はご存知ですか?
検診は病気を早期に発見することで手術などの高額医療の負担が減るように政府が推進しているのです。検診をして異常がないと「私は健康体だ」と安心されると思いますが、ここには落とし穴があります。例えば肺のレントゲン検査で何も所見がなくても肺がんがないとは言い切れないのです。
健康診断には3層の状態があります。第一層として「全くの健康体」、第二層として「健康診断では異常なしだがなんらかの病気が隠れている」、第三層として「健康診断で異常がある」の3層です。健康診断で異常値があるのに全く気にしていない人を時々見かけますがこれは倒れかかっているビルを放って置くようなもので早く対処すれば早いほど立て直すのに負担が少なくて済みます。検診で異常がないといってもがんや動脈硬化がないと断定できるわけではありません。ましてや検診で異常があればすぐに対応する必要があります。
ここでポイントは健康診断が病気前の病気を見つけるチャンスであると言うことです。たとえば、肝機能は正常であれば問題ありませんが、GOT、GPTのうちGPTだけが高値をしめした場合、肝炎または脂肪肝が疑われます。脂肪肝は体で代謝されるエネルギーに比べ食事などによるカロリー摂取量が多い分を脂肪として肝細胞に貯めこんだものです。甘いものやご飯のような脂肪分でないものでも貯める時には脂肪に変わります。私はそんなに食べてないのにと言う方は一度、医院などで食事指導を受けてみましょう。3日分の食事内容を全て書き出して栄養士さんにみてもらうのですが、カロリーオーバーを指摘されることが多いです。それでも私は食べてないと言う方はストレスが関係しているかもしれません。
一説によるとストレスは細胞を先祖帰りさせると言われており、肝細胞はストレスにより脂肪を貯め込んでいた進化前の状態に戻るらしいのです。対処法は食事よりもストレス解消と言うことになります。いずれにしても脂肪を貯めこんだ肝臓は働きが悪くなり、進行すると元に戻らなくなります。フォアグラと同じ脂肪肝からは早く脱したほうが良いと考えられます。
健康診断は職種により項目が違うことをご存知でしょうか?しかもたくさんの検査を受けるとそれだけ経費がかかるので、なるだけ項目が絞ってあるのです。健康診断費用を負担する側(企業側)からすれば当然のことですが、健康診断を受ける個人の側からするとより詳しく調べてもらいたいわけです。
私の経験では建築関係の方々は日頃体を使っていらっしゃるせいか比較的健康、丈夫な方が多いようです。息切れがしますというのでよく伺うと建築中のエレベーターのついてないビルの15階まで上がると息が切れますとおっしゃる。日頃運動をほとんどしない方と比べますと大変な体力ということになります。逆に1日中デスクワークをされている方ですと消費カロリーが少なく、筋肉も使わないためか何らかの異常を示す方が多いという印象を受けます。特にご自身も健康に不安があるというのは座ったきりのタクシー運転手さんです。
検診は病気を早期に発見することで手術などの高額医療の負担が減るように政府が推進しているのです。検診をして異常がないと「私は健康体だ」と安心されると思いますが、ここには落とし穴があります。例えば肺のレントゲン検査で何も所見がなくても肺がんがないとは言い切れないのです。
健康診断には3層の状態があります。第一層として「全くの健康体」、第二層として「健康診断では異常なしだがなんらかの病気が隠れている」、第三層として「健康診断で異常がある」の3層です。健康診断で異常値があるのに全く気にしていない人を時々見かけますがこれは倒れかかっているビルを放って置くようなもので早く対処すれば早いほど立て直すのに負担が少なくて済みます。検診で異常がないといってもがんや動脈硬化がないと断定できるわけではありません。ましてや検診で異常があればすぐに対応する必要があります。
ここでポイントは健康診断が病気前の病気を見つけるチャンスであると言うことです。たとえば、肝機能は正常であれば問題ありませんが、GOT、GPTのうちGPTだけが高値をしめした場合、肝炎または脂肪肝が疑われます。脂肪肝は体で代謝されるエネルギーに比べ食事などによるカロリー摂取量が多い分を脂肪として肝細胞に貯めこんだものです。甘いものやご飯のような脂肪分でないものでも貯める時には脂肪に変わります。私はそんなに食べてないのにと言う方は一度、医院などで食事指導を受けてみましょう。3日分の食事内容を全て書き出して栄養士さんにみてもらうのですが、カロリーオーバーを指摘されることが多いです。それでも私は食べてないと言う方はストレスが関係しているかもしれません。
一説によるとストレスは細胞を先祖帰りさせると言われており、肝細胞はストレスにより脂肪を貯め込んでいた進化前の状態に戻るらしいのです。対処法は食事よりもストレス解消と言うことになります。いずれにしても脂肪を貯めこんだ肝臓は働きが悪くなり、進行すると元に戻らなくなります。フォアグラと同じ脂肪肝からは早く脱したほうが良いと考えられます。
健康診断は職種により項目が違うことをご存知でしょうか?しかもたくさんの検査を受けるとそれだけ経費がかかるので、なるだけ項目が絞ってあるのです。健康診断費用を負担する側(企業側)からすれば当然のことですが、健康診断を受ける個人の側からするとより詳しく調べてもらいたいわけです。
私の経験では建築関係の方々は日頃体を使っていらっしゃるせいか比較的健康、丈夫な方が多いようです。息切れがしますというのでよく伺うと建築中のエレベーターのついてないビルの15階まで上がると息が切れますとおっしゃる。日頃運動をほとんどしない方と比べますと大変な体力ということになります。逆に1日中デスクワークをされている方ですと消費カロリーが少なく、筋肉も使わないためか何らかの異常を示す方が多いという印象を受けます。特にご自身も健康に不安があるというのは座ったきりのタクシー運転手さんです。
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